A043 — Swern 酸化(一級アルコール → アルデヒド)
Swern 酸化(一級アルコール → アルデヒド)
predict モード — 生成物(ゴール)から電子移動の経路を予測しよう
📄 問題(反応式の原図)

生成物(ゴール)
α,β-不飽和アルデヒド(ゲラニアール類)
- -CH₂OH が -CHO に酸化(アルデヒドで止まる)
試薬DMSO(ジメチルスルホキシド、Me₂S=O) (酸化剤本体)(COCl)₂(塩化オキサリル、oxalyl chloride) (DMSO の活性化剤)Et₃N(トリエチルアミン、NEt₃) (塩基:α-H を引き抜く)
溶媒・条件CH₂Cl₂(ジクロロメタン) (不活性溶媒)-50°C → rt (低温で副反応を抑制)
後処理水洗・抽出 (Me₂S は揮発性で除去容易)
このSwern酸化反応では、出発物質の一級アルコールの酸素原子、活性化剤であるDMSOの酸素原子、もう一つの活性化剤である塩化オキサリル((COCl)₂)のカルボニル炭素原子、そして塩基であるトリエチルアミン(Et₃N)の窒素原子が重要な役割を果たします。
DMSOの酸素原子は孤立電子対を持つため求核剤として働きます。塩化オキサリルのカルボニル炭素は、隣接する電気陰性度の高い塩素原子と酸素原子によって強く電子不足(δ+)となり、求電子剤として攻撃を受けやすくなっています。アルコールの酸素原子も同様に孤立電子対を持つため求核剤となります。トリエチルアミンの窒素原子は孤立電子対を持ち、塩基として作用しプロトン(α-H)を引き抜きます。教科書では、酸の強さがH+が離れた後の陰イオンの安定性で決まることや、結合を介して電子密度が変化する誘起効果(I効果)について説明されています。
[出典: 5章 p5]
この反応の律速段階、または反応を不可逆的に駆動する主要な駆動力は、Step AでDMSOが(COCl)₂を攻撃し、二酸化炭素と一酸化炭素が気体として放出される過程です。この気体の放出はエントロピーの増大をもたらし、クロロスルホニウムイオンの生成を強力に推進します。鍵となる結合は、まずDMSOの酸素原子と塩化オキサリルのカルボニル炭素原子の間で形成される結合、そして次にアルコールの酸素原子とクロロスルホニウムイオンの硫黄原子の間で形成される結合です。
まず、DMSOの酸素の孤立電子対が、塩化オキサリルのカルボニル炭素を求核攻撃し、中間体を形成します。その後、この中間体から二酸化炭素と一酸化炭素が放出され、クロロスルホニウムイオンが生成します。次に、一級アルコールの酸素の孤立電子対が、生成したクロロスルホニウムイオンの硫黄原子を求核攻撃し、同時に塩素アニオンが脱離することで、アルコキシスルホニウム中間体が形成されます。続いて、トリエチルアミンの窒素の孤立電子対が、このアルコキシスルホニウム中間体のアルファ位の水素原子を引き抜きます。これにより、硫黄イリドという中間体が生成します。最後に、硫黄イリドの炭素原子の電子対が炭素-酸素二重結合を形成し、同時にジメチルスルフィドが脱離することで、目的のカルボニル化合物が生じます。
最終生成物は、一級アルコールの水酸基が酸化された形のカルボニル化合物です。この反応では、特定のα,β-不飽和アルデヒドであるゲラニアールが生成します。
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📚 参考文献
[2] Swern, D. et al. J. Am. Chem. Soc. 1978, 100, 4611–4618. (Swern 酸化の原報)