試薬CrO₃(三酸化クロム) (Cr(VI) 酸化剤)H₂SO₄(硫酸) (酸触媒)
溶媒・条件acetone-H₂O(アセトン-水混合溶媒) (Jones 試薬の標準条件)rt(室温)
後処理過剰の酸化剤を i-PrOH で分解 → ろ過 (Cr(III) 塩を除去)
この反応は、二級アルコールに含まれるヒドロキシ基(-OH)と、Jones試薬に含まれるCrO₃(三酸化クロム)が主な反応種として注目されます。CrO₃は六価クロム(Cr(VI))として存在し、強力な酸化剤として機能します。
Cr(VI)はd⁰電子配置であり、電子を受け取りたがる強い求電子性(電子を欲しがる性質)を示します。これは、Cr(VI)が周囲の酸素原子によって強く電子が引き寄せられ、Cr原子が非常に正に分極しているためです。一方、二級アルコールの酸素原子は孤立電子対を持つため、求核性(原子核を好む性質、電子を与えたい性質)があり、Cr(VI)を容易に攻撃します。また、反応は硫酸によって酸性条件に保たれており、これが活性種の形成や脱離の促進に寄与します。
[出典: 5章 p5]
鍵となる中間体は、アルコールとクロム酸が結合して形成されるクロム酸エステルです。この中間体から、隣接する炭素(α位)に結合した水素と、クロムに結合した酸素との結合が、塩基によって協奏的(同時に進行する)に切断されるE2様脱離が律速段階となります。この段階で、新しい炭素-酸素二重結合が形成され、これによりアルコールが酸化されます。
[出典: 9章 p3]
反応は三段階で進行します。
Step A: まず、水の酸素の孤立電子対が三酸化クロムのクロム原子を攻撃してO-Cr結合を形成します。同時に、Cr=O結合のπ電子対が酸素原子へ移動し、水からのプロトンを受け取って水酸化物(-OH)を形成することで、クロム酸が生成します。
Step B: 次に、二級アルコールの酸素の孤立電子対がクロム酸のクロム原子を求核攻撃し、O-Cr結合を形成します。この後、プロトン移動と水分子の脱離が起こり、クロム酸エステル中間体が生成します。
Step C: 最後に、水分子などの塩基がクロム酸エステルのα位の水素原子を引き抜きます。これと同時に、炭素-水素結合の電子対が移動して炭素-酸素二重結合(カルボニル結合)を形成し、O-Cr結合が切断されて六価クロムが三価クロム種として脱離します。これにより、最終的な生成物が得られます。
このJones酸化反応により、出発物質のシクロオクタノール(二級アルコール)はシクロオクタノンという環状ケトンに変換されます。反応中に六価クロムは三価クロムに還元されます。
📚 参考文献
[2] Jones, E. R. H.; Sanderson, N. D. J. Chem. Soc. 1949, 258–268. (Jones 酸化の原報)