試薬(HCHO)ₙ(パラホルムアルデヒド) (HCHO の重合体、加熱で HCHO を放出)Me₂NH(ジメチルアミン) (二級アミン)HCl(塩酸) (酸触媒)
溶媒・条件EtOH(エタノール)/ refluxEt = エチル基(C₂H₅)
後処理特になし
本反応では、アセトフェノンのカルボニル基とそれに隣接するα位の水素、ホルムアルデヒドのカルボニル基、そしてジメチルアミンの窒素原子の孤立電子対が特に重要です。これらが互いに反応することで新たな結合が形成されます。
反応は二つのパートに分かれます。まず、酸性条件でホルムアルデヒドのカルボニル酸素がプロトン化され、カルボニル炭素の電子不足度(δ+)が増大します。これにより、ジメチルアミンの窒素原子の孤立電子対という求核剤(電子を供与する化学種)がこの電子不足な炭素を攻撃し、最初の結合が形成されます。その後、生成したヘミアミナールの水酸基がプロトン化されて良い脱離基(分子から離れていく際に安定な状態を保つ原子または原子団)となり、同時に窒素の孤立電子対が電子を押し出すことで水分子が脱離し、イミニウムイオンという強力な求電子剤(電子を受け取る化学種)が生成します。次に、アセトフェノンのカルボニル酸素がプロトン化されることで、隣接するα位の炭素に結合した水素原子が酸性化しやすくなります。この水素原子が離脱すると同時に、カルボニル基の電子が移動してエノール(炭素-炭素二重結合とヒドロキシ基を持つ構造で、求核剤として働く)が生成します。エノールの炭素-炭素二重結合は、ヒドロキシ基の酸素原子からの電子供与により電子密度が高く、この電子豊富な部分が、先に生成したイミニウムイオンの電子不足な炭素を求核攻撃することで、新たな炭素-炭素結合が形成されます。
[出典: 13章 p6]
この反応において、イミニウムイオンの生成と、エノールの炭素-炭素二重結合がイミニウムイオンの電子不足な炭素を攻撃し、新たな炭素-炭素結合が形成される段階が特に重要です。特に、この炭素-炭素結合の形成は非常に安定な結合を生成するため、反応を不可逆的に進行させる強い駆動力となります。
まず、酸性条件でホルムアルデヒドの酸素がプロトンを受け取り活性化されます。次に、ジメチルアミンの窒素の孤立電子対が活性化されたホルムアルデヒドの炭素を求核攻撃し、同時にカルボニルパイ電子が酸素へ移動することでヘミアミナールが生成します。続いて、このヘミアミナールの酸素がプロトンを受け取りヒドロニウムイオン型になり、同時に窒素の孤立電子対が中心炭素へ電子を押し出し、ヒドロニウムイオン型の酸素と炭素の結合電子対が水分子として脱離することでイミニウムイオンが生成します。
次に、アセトフェノンのカルボニル酸素がプロトンを受け取り活性化されます。これに伴い、α位の炭素-水素結合の電子対が移動して二重結合を形成し、同時に活性化されたカルボニル酸素と炭素のパイ電子が酸素へ移動することでエノールが生成します。最後に、エノールの炭素-炭素二重結合のパイ電子がイミニウムイオンの炭素を攻撃し、新たな炭素-炭素結合を形成します。同時にイミニウムイオンの炭素-窒素二重結合のパイ電子が窒素へ移動し、その後中間体の酸素がプロトンを放出しカルボニル基が再形成されることで、最終的な生成物が得られます。
最終生成物は、β-(ジメチルアミノ)プロピオフェノン(別名 Mannich 塩基)です。
📚 参考文献
[4] March, J.; Smith, M. B. March's Advanced Organic Chemistry, 7th ed.; Wiley, 2013.